環境文明研究所からの提案
消費者、農家、事業者、行政の協力による
有機物地域循環システムの構築
はじめに
社会を持続可能なものとしていく上では、これまでの資源採取→生産→消費→廃棄という一方通行の生産・消費構造を循環を基調とした環境負荷の少ないものに変えていく必要がありますが、このような循環を基調とした社会の実現に地域から取り組んでいくための第一歩が有機物の地域循環といえるでしょう。
食糧や木材、衣服の原料など、様々な形で私達の生活を支えている有機物は再生可能な資源です。有機物は、元々は植物の光合成により生産されたものであり、特に人間がエネルギーを加えなくても微生物の働きによって分解されて元の材料に戻り、再び植物に利用されます。また、微生物による分解の過程からはメタンなどを回収し、エネルギーとして利用することも出来ます。
このような環境に優しく再生可能な資源である有機物を地域内で効率良く循環利用し、石油などの枯渇性資源への依存を減らしていくことが持続可能な社会の実現につながるのです。
1.目的
消費者、農家、事業者(外食産業、食品工業)、行政の連携・協力のもとに、有機性廃棄物の飼料化・肥料化等を通じて有機物の地域循環システムを構築し、さらに有機性廃棄物からの積極的なエネルギー回収を行い、これによって廃棄物の減量化・再資源化と農業生産の基盤である健全な土壌の維持・改善を図る。
2.背景
最終処分場確保における困難の増大と廃棄物減量化の必要性の増大
ダイオキシン発生抑止のための焼却場における燃焼温度適正管理の必要性の増大
食糧・飼料の大量輸入に伴う食糧自給率の低下(平成8年42%)と窒素過剰
→ 窒素過剰による水域の富栄養化および地下水の窒素汚染の懸念あり
化学肥料に依存した農業生産体系と単作化による土壌劣化の進展
土壌劣化に起因する作物の抵抗性低下に伴う農薬の多投と農薬による環境汚染および農産物の安全性に対する懸念の増大
消費者の健康・安全志向と有機農産物に対する需要の増大に伴う有機肥料需要の増大
→ 耕種農業と畜産が分離した今日の状況では小規模耕種農家の有機肥料自給は困難
メタンが温暖化防止のための排出削減対象ガスに含まれたことによる畜産糞尿処理対策の重要性の増大
3.主な内容
1)有機性廃棄物の堆肥化(コンポスト化)
家庭および外食産業からの生ゴミ、畜ふん尿、浄化槽(下水道)汚泥、農業廃棄物等の有機性廃棄物を堆肥化する。
2)有機性廃棄物からのエネルギー回収
堆肥化に当たってはメタン発酵等を組み合わせて積極的なエネルギー回収を図る。
3)有機性廃棄物の飼料化
家畜飼料の原料として利用可能な食品工業残渣および生ゴミ(外食産業・ホテル)の飼料化を図る。
4)健全な土づくりと有機農産物生産
生産した堆肥を農地および市民農園等へ還元し、健全な土づくりを進めるとともに安全な有機農産物の生産を促進する。
5)地域農業の活性化
学校給食での利用など、生産した有機農産物の地域内消費を促進し、これを通じて地域農業の活性化を図る。
6)市民参加の促進
有機物の地域循環システムの構築を通じて、市民参加の促進と市民の環境意識の向上を図る。
4.期待される効果
1)廃棄物の減量化
有機性廃棄物の分別・再利用による焼却・処分に廻るゴミの減量化
2)ダイオキシンの発生抑止
焼却炉の温度低下の原因となる生ゴミを焼却しないことによる燃焼温度管理の向上とダイオキシン発生の抑止
3)土壌の健全化
堆肥による土壌への有機物の還元と化学肥料・農薬多投からの脱却による土壌の健全化
4)農業からの環境負荷の削減
緩効性の有機肥料の使用による農地からの窒素流出の削減、土壌の健全化を通じた作物の抵抗性向上による農薬使用量の削減、および畜産糞尿の適正処理による農業からの環境負荷の削減
5)化石燃料の使用削減による温暖化防止
焼却温度維持のための燃料投入の削減、堆肥化過程から回収したメタンによる化石燃料の代替等、化石燃料の使用削減による温暖化防止への貢献
6)メタン排出の削減による温暖化防止
メタンの発生源である畜産糞尿を適正に処理し、メタンを回収してエネルギー利用することによる温暖化防止への貢献
7)輸入飼料の消費削減による食糧自給率の向上
食品工場残渣、外食産業およびホテル等の大口排出源からの生ゴミを飼料化して輸入飼料を代替することによる食糧自給率向上への貢献
8)有機生産による安全な食糧の供給
土壌の健全化を通じた作物の抵抗性向上による農薬使用量の削減等、堆肥を用いた有機農業の推進による市民への安全な農産物の供給
9)地域農業の活性化
地域で生産した農産物を地域内で積極的に消費することを通じた地域農業の活性化
10)市民の環境意識の向上
生ゴミの分別、地域産の有機農産物の購入、堆肥の庭・市民農園での利用等、有機物の地域循環に参画することを通じた市民の環境意識の向上
5.有機物地域循環システム構築の支援
循環を基調とした環境負荷の少ない地域社会づくりを進める上では、市民(市民、農家、事業者等、地域社会を構成する全ての主体)の参加と協力が不可欠です。
環境文明研究所は、市民参加の下に有機物地域循環システムの構築を目指す自治体の取組みを支援します。
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